前回書いたようなことは、要するに、英国を去った人々は帝国から離れてしまったわけではなく、海外英領土の一翼を担い、その強さとなっているということが理解されるようになってきています。
国民を失うことのリスクは、その国民が大英帝国外の国に向かう時にのみ生じてくるのです。
一見したところ連帯感にあふれるこの大英帝国の理想の陰に、実は身勝手な動機が隠されていました。
英国は人や金を海外領土に送り込むことで、自国の工業製品を無条件に受け入れてくれる市場を得たいと願い、海外領土はその天然資源、ことに農村を基盤とした産業を開発するために移民を受け入れる様に希望しました。
英国が夢に描いた構想は、工業国家である英国を本国として、商業及び国民の間に共通して流れる民族の血を媒介に、農業国家である「娘」にあたる自治領と提携。
その内部で自給自足が可能な帝国を築き上げることでした。
しかし、現実は英国の思惑どおりには運ばなかったのです。
ヨーロッパを戦場とした第一次世界大戦が終結に向かうと、帝国内への移住の拡大に向けて、数多くの計画が実現される見通しとなりました。
その第一段階として英国政府は退役軍人の移住計画に着手しました。
軍務に服した人々は、英国領土の政府に対して移住を申請することができました。
申請が受け入れられた場合、英国政府は個人に代わって移住に要する費用を支払っています。
この計画は、1919年4月から1922年末にかけて実行されました。